不登校情報センターによる元利用者の実名公表予告について@

10月12日付・引きこもり居場所だより「I・Mくんへの手紙――実名を発表する予定」を読んで




――今回の理事長による元利用者I・M氏に対する実名公表予告についてですが、読んでいくつかの疑問が湧きました。 まず、「I・Mくん」とは誰ですか?

■ネット上には不登校情報センターに対して批判的な意見をネット上に投稿している人が、当サイトを除けば、 すでに更新の止まった人も含め4人はいるものと思われますが、そのうちの一人の方です。 しかし松田理事長がどの記事をI・M氏によるものと判断しているのかは明らかではありません。 ちなみに今までにセンターとI・M氏との間に起ったトラブルについて、理事長の見解はセンターのカテゴリ「活動を巡る批判に答える」内の記事により詳しい事がわかります。

――今回予告された実名公表はセンターに関する「有害情報」削除との交換条件でしょうか?

■はっきりとは示されてはいませんが、記事にも「10月いっぱいは確かめる期間にします。その間にどうするのか●●君も考えて対処してください」 とあることからみて、おそらくそうだと思われます。

――「有害情報」除去という目的から見て、この通告は有効なのでしょうか?

■その点についてはまだ判りませんが、もし理事長が問題としている何らかの記事が削除されれば、「センターの脅迫を受けてI・M氏が削除せざるを得なくなった」という構図が見る人には印象づけられてしまうでしょう。 また、記事の削除がされなかったとしても、脅迫に近い行為がセンターによって行われたと見る人も少なくないだろうことを考えれば、 今回の通告がセンターにとっても自縄自縛になってしまったような感じは否めません。

――ちなみに、どの部分がセンターにとって「有害」と判断されたのでしょうか?

■「戸塚ヨットスクールや北朝鮮の何かと結び付け」とありますが、理事長がどの部分を悪質と判断したのか正確なことはわかりません。 I・M氏のセンター批判に対しては、センター側のサイトですでに反論済みですし、I・M氏の記事はあくまで元利用者の私見や推測、感情の吐露として読まれているのではないでしょうか。 少なくとも私に確認できたものはその範囲であり、むしろ読んでセンター側に同情を寄せる人もいるのではないかとも思えるものでした。 「実名公表」というセンターにとってもリスクの高い条件を出して削除を迫るほど「有害」な情報とは思えませんでした。

――なぜこのタイミングで実名発表を通告したのでしょうか?

■I・M氏によるセンター批判の記事が掲載された当時から理事長は、様子を見つつ当面は容認していたのでしょう。そのころの記事も 「トーンは今と同じ」とありますから、理事長は現在のI・M氏の記事内容を把握しているかも知れませんが、 一方で「このところ見ていません」ともありますし、I・M氏側のセンター批判が活発とも思えないこの今、なぜ理事長が実名発表予告という強硬な措置に出たのかは不明です。

――ネット水面下でセンターとI・M氏の間に何か新たな動きがあったとは考えられませんか?

■今回、理事長により送られたという「I・Mくんへの手紙」はその一つでしょうが、I・M氏の側からは理事長に対して批判や文章による攻撃があったという記述はありませんので、そのような事実もなかったのでしよう。 センターの記事によれば、以前には脅迫的な文書や自殺予告、謝罪の文章が送られてきたということです。

――そのような事実の公表について問題はないのでしょうか?

■その後もI・M氏のセンター批判が続いたため、理事長もやむを得ずという思いだったのではないかと想像します。 その是非はあくまでI・M氏の実名の守秘や、批判の内容がどれほど悪質な内容であったのかという条件にもよると私個人は思いますが。

――埋事長はI・M氏から脅迫を受けた際に公的機関に相談したのでしょうか?

■センターの記事によれば、自殺予告を受けた際には保健所に依頼したそうですし、司法機関にも相談したそうです。 しかし、I・M氏に対して強過ぎる公的措置が下されることを恐れて、理事長はあまり強くは届け出なかったのかも知れません。

――今回、公的機関に相談せず、実名発表を通告したのもI・M氏への温情によるものでしょうか?

■改めて公的機関に相談しなかったかどうかは理事長の今回のブログの記事からは判りませんが、もししたのであれば、その事実や結果もブログを通じて公表して頂きたいところです。 まだしていないのであれば、センターが実名公表を予告すること、公表を実行することについて、その機関がどう判断するかも伺った上で公表して頂きたいと思います。 また実名発表予告という措置が、どれほど他の理事や関係者との間で諮られたものなのかも理事長の記事からは残念ながら伝わってきません。 もしまだなのであれば、ぜひ内部、外部の人と今からでも十分に話し合って頂きたいと思います。

――理事長やセンターがI・M氏のネット上の発言により受けるダメージは大きいのでしょうか。

■少なくとも理事長は放置できるものではないと考えたのでしょう。個人的な怒りというよりは、センターの社会的信用や関係者の心理面に及ぼす影響が小さくないと判断したのかも知れません。 気になるのは、4年前の記事からは「不登校情報センターと松田武己への攻撃、中傷、誹謗、脅迫、業務妨害、信用毀損、名誉毀損」ととらえていたことが判るのですが、 最近では「私が気分を害するとかショックを受けるとか、それはないです」といった発言や、 I・M氏のネット言説にしても「本人が幼児性や醜態をさらし、自分の世界をせまくするだけのものでしかない」という論調へとシフトしていることです。

――それはあくまで批判者のモチベーションを下げるためのポーズとも思われますが?

■だとしてもやめた方がいいと思います。I・M氏の精神的成長を促すために実名を公表するなどというのは、許されることではないでしょうし、I・M氏が条件を飲んで問題の記事を削除したからといって成長したことになる訳でもありません。 有害情報削除との交換条件でないのだとすれば、今後一体どんな理由でプライバシーを公表されるかと利用者、元利用者たちの間にも不安が広がるでしょう。 もしI・M氏の言説によりセンターが迷惑しているのであれば、「迷惑している」とはっきりと表明すべきです。 このように結果次第では脅迫や報復ととられかねない措置が第三者に模倣されないためにも。 その点はイジメと同じではないでしょうか。

――余談ですが、当サイトもいちおう去年の5月に「私には何の問題もないのです」というお言葉を理事長から頂いているのですが。

■それも本心からの言葉ではなく単なるポーズだとしたら、今後どう対応が変化するかは判りません。

――当サイトは仮に実名を公表されてもセンターに批判的な記事を削除することはありませんが、 I・M氏も問題記事の削除に応じなかった場合、理事長は次にどのような行動に出るでしょうか?

■4年前の記事によれば「IM氏の実名と住所の公表」と並んで「その他の法律的、社会的に可能な方法」を考えているらしいですが、 今のところ具体的には特に何も思いついていないのではないかと思います。 私個人が理事長の立場であれば「実名、住所の公表」より先に公的機関に相談するでしょう。

――それが最終的に警察への通報しか残っていなくてもでもですか?

■最終的に犯罪として警察へ通報するか、容認(つまり泣き寝入り)するかという岐路に至るまでには、できることはいろいろあるのではないかと思いますが、いずれも「支援団体としての立場から元利用者のプライバシーを公表する」などというものに比べればリスクははるかに低いといえるでしょう。 理事長もいきなり実名公表に踏み切った訳ではなく、どのような解決策を試みたのかを、ネット上で詳しく発表した方がよいかも知れません。 また、少なくとも加害者の逮捕がニュースになるほどの重大な犯罪の場合であれば、「被害者がネット上に加害者の実名を公表してから警察に通報する」という行為は当然問題視されるでしょう。

――理事長は実名の公表により、かえって有効な解決の途を失なうということですか?

■その可能性もあると思います。また、公的機関が「実名公表」を承認するとは私には考えにくいのですが、だとすれば公表は独自の判断に基づいて行なうことになるでしょうし、 そうなると問題の記事の内容が果してどれだけ悪質なものなのかという判断も、センター独自の観点によって恣意的に歪曲されてしまう恐れも出てくるわけです。 極端に言えば、気に入らない批判をセンターが実名公表をタテに封殺する、そのようなことも可能になるでしょう。 そのような懸念を招く今回の通告そのものが、なによりセンターの致命的弱点になってしまうのではないか、その点が不安です。

――理事長は建設的な批判ならば受け入れる姿勢を見せてはいますが、「唯々諾々」と活動に参加できる方はともかく、そのような「成長した批判者」になる可能性のある利用者、元利用者にはやはり少しは不安が残るのではないでしょうか?

■私はそう思います。実名公表という措置の是非について理事長の見解が変わることを望んでいます。


10月15日 むすかりんT



不登校情報センターによる元利用者の実名公表予告についてA



――「引きこもり居場所だより」の11月4日付記事によれば松田理事長が予告した実名公表は、依然●●氏の様子を見ながら今後も行なわれる可能性が残っていますが、当同人がこれに反対意見を表明した理由は何でしょうか?

■理事長の3年前の記事にある言葉と同じく「センターによる脅迫を見過ごすのはセンターに対して不誠実ではないか」という心境に近いものとご理解下さい。 本来、不登校、引きこもり当事者への偏見や悪意から利用者を守るべき支援団体が、逆にそれらを利用するかのような手段をとることは、やはり支援団体の信用を損ないかねない問題でしょう。これにより●●氏のみならず、他の現在、過去、未来のセンター利用者、またセンター自身も危険な状態に入ったと当同人は判断しました。 一度ネット上に公表されてしまった個人情報は、いつまでもネット上に残る可能性もあり、そうなれば公表した理事長の意思でも削除しつくすことは困難です。 理事長にとっても予想外の事態を招きかねません。さらには、実名公表予告が間接的には無関係の第三者にとっても有害なものになる可能性もあるでしょう。

――どのような状況で第三者に害が及ぶのでしょうか?

■前回も述べた通り、安易な模倣者により言論の封殺が行われる場合です。したがって実名公表予告も誹謗中傷と同じく、ネットリテラシーの観点からは望ましいものとは思えません。 ことに今回問題の一つと思われるのは、有害情報によりセンターがどれほど切実に悩まされ、理事会内部や公的機関との間でどれほどの熟議をへて実名公表を決断したかというプロセスが、 加害者のプライバシーを知りうる立場の第三者には一切不明だという点です。

――3年前の記事で理事長は実名公表に代わる対案を求めています。どんなものが考えられますか?

■一つの私案ですが、まずセンターにとって問題となる●●氏の文章を
@「私的な通信や対面時の発言によるもの」と
A「ネット上に発表されたもの」
に分けた方がよいのではないでしょうか。
@については前回も述べた通り、問題があれば公共機関に相談します。謝罪が済んでいるものはともかく、新たに悪質なものが送られてきた場合、最終的には警察への通報も止むを得ませんが、文章の内容や対応の経過をネット上で公表する必要はないでしょう。
Aについては、根気よくネット上で逐条的反論を繰り返し、脅迫、虚偽など悪質な部分があれば、やはりネット上で問題箇所を(プライバシーの暴露などの場合 は私信で)指摘して削除を求め、並行して公的機関に違法性、反道義性を訴え、対策についてのアドバイスを仰ぎます。そしてその相談内容や解答もネット公開し、 実名公表予告の代りにその対策の実行を交換条件のカードとします。なおそれらの情報発信の場は、センターのサイトとは別に設ければテーマも解りやすく、検索もされやすくなるでしょう。

――そこまで細かい情報を公表する必要があるのでしょうか?

■このような情報の公開により、万が一警察への通報も効果なく、センターが最終的に実名公表予告という措置を取らざるを得なくなる時が来るとしても「それが決して安易な選択によるものではないのだ」という説明責任を果たすことになります。 つまりセンターにとってもいわば「アリバイ」になる訳ですから、できるだけ細い方がいいでしょう。

――問題箇所を指摘するだけで膨大な量にならないでしょうか?

■たとえば「理事長ならこう言いそうです」というのは、表現から想像であることは明らかであり、センターのせいで「私は病気になった」 「××氏が自殺した」というのも主観に傾いた記述ですので、削除を要求するほどの危険性はなく、反論で十分のはずです。本当に悪質な部分はそう多くはないでしょう。もちろん危険性の低い部分に関しては、反論の必要なしと判断して今まで通り放置する選択もあります。ちなみに「周囲の悪意は受け流すことです」と理事長自身もかつて私に教えて下さったことがありました(2001年3月2日談)。

――双方エスカレートして、ネット上での反論合戦に発展する可能性もありますね?

■もしそうなれば、むしろ理事長は支援団体の運営者として喜んでもいいのではないでしょうか。 対立や批判が悪とされがちな風潮の中では、弁証法的な態度で人間関係に臨むことはなかなか難しいと思いますが、松田理事長は利用者の自立のためにも果敢にそれに挑戦(すると宣言)しています。 そのような姿勢を第三者にも理解してもらうよい機会ととらえ、相互理解、問題解決に向けてその包容力、対話力を発揮して頂きたいと思います。

――批判に対する反論以外に、センターが信用を回復するために有効な対策はあると思いますか?

■まず一つは、理事長が今回の「実名公表予告」という措置の妥当性を見直し、これに否定的な立場を明確にすることだと思います。 もう一つは、想像や主観はともかく事実としてセンター自身の側に違法、反道義的な行為、過失があった場合、反省の意思表示を見せて頂くことです。 たとえ言い逃がれをしなくても、説明責任を放棄し訂正も謝罪も全くなしという姿勢こそ、有害情報よりはるかに危険な、センターの信用を毀損する最大の要素になると思います。

――ここまでセンターに対する提言ばかりになりましたが、最後に批判する側が気をつけねばならないことは何だと思いますか?

■理性的、客観的、具体的、建設的なトーンを心がけ、犯罪的な文書の公開や送付は絶対に慎むことです。批判の信憑性や動機を疑われ、 わが身に逮捕の危険さえ招くでしょう。

――当サイトに今後新たなセンター批判を掲載する予定はありませんが、一応肝に命じます。


11月4日 むすかりんT








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